
ど根性馬、タマモプラネット
「踏み切ってジャンプ〜」
障害競走には、平地競走とは一味違う感動がある。スタート、位置取り、飛越。どれ1つをとっても人馬一体の呼吸が必要である。
ゆえに、終わってみれば、レース1つ1つがまるでドラマのようだ。あなたはタマモプラネットという馬をご存知だろうか?
スタートからハナに立てば、かなりしぶといど根性障害馬だ。かつて、あのオジュウチョウサンに抜かれてからも、持ち前のガッツで3着に粘ったこともある。その諦めない美学が私の心を熱くさせる。
そんなタマモプラネットが、2018年10月14日に東京競馬場で施行された東京ハイジャンプにて出走することから、私はウインズ梅田で応援馬券を握りしめて観戦。相手は中山グランドジャンプ4着のルペールノエル、前走5馬身差圧勝のサーストンコラルドなど実績馬が名を連ねる。しかし、他に逃げ馬は見当たらない。
これは、障害競走通算18戦目、馬齢8歳にして初の重賞も狙えるのではないか。そんな期待を胸に抱きながら、ゲートは開いた。「スタートさえ、決まれば…」3枠3番、赤帽に、芦毛の馬体は、抜群の好スタートを切った。
同じく好スタートの2枠2番のサーストンコラルドを振り切って、グイグイと後続との差を離していく。
「飛ばしすぎちゃうか?」
「止まってまうであんなもん、ハハハハハ。」
周りのおっちゃんたちがタマモプラネットのことしか口にしない。それもそのはずである。何せ、一人旅というのにふさわしいほど、後続との差は離れて、気持ち良さそうにすいすい逃げている。確かに、ペースは速い。
しかし、そこは障害デビュー以来ずっとコンビを組んできた小坂忠士ジョッキーのことだ。この馬のことは理解している。そう思って、芦毛の美しさに見とれながらしばし、その姿に目を奪われていた。
3コーナーカーブで、15馬身。その差を詰めようと、ルペールノエルやサーストンコラルド、ヨカグラの鞍上が仕掛ける。
ダートコースを横切る頃には、さすがに後続との差は縮まっていた。
「いっぱいや、もういっぱいやろ。」
そう言っておっちゃんたちが騒ぎ出す。
「この人たちは、タマモプラネットの粘り強さを知らない。さあ見せてやれ、お前のど根性を!」
心のなかでそう叫びながら、レースは最後の直線に差し掛かる。4馬身まで詰められてもなお、単騎ハナを切っていた。そして、最後のハードルを飛越…
ここで、予期せぬ事態に陥った。タマモプラネットは、前足をハードルに引っ掛け転倒。小坂忠士騎手は落馬。競走中止となった。本当にバテていたのだ。
しかし、タマモプラネットはすぐさま立ち上がり、空馬となりながらも残りの直線を完走。残念ながら小坂忠士騎手はケガをされたが、タマモプラネットは故障などなく無事であった。今回のど根性は、落馬後に見られた。これもまた、障害競走ならではの感動である。
頑張れ、タマモプラネット。